歯のはなし 2006年8月号
   <噛めない義歯>

 毎日美味しい食事を丈夫な歯で、バリバリと食べられる人は、顔を見ると活力があり、健康状態も良好です。

 私の治療室で診る患者さんは、父の開業当時から私へと引き継がれ、今日まで70年以上も続いているためか、高齢者が多いです。
嬉しいことに「80−20運動」ではありませんが、80歳近くになっても歯が数本欠けただけで、あとの歯は全部自分の歯が健在であるという時には
「これはすばらしい!」と思うと共によろこびにひたることが出来ます。

 厚生労働省の調査によると80歳〜84歳で歯が20本以上ある人の割合は20%以上であることがわかりました。今後は更に多くなることでしょう。
しかし、なかには不幸な患者さんもいます。 
ビニール袋に大事そうに持ち込んで「どこで作ってもらっても、痛くて思うように食べられない」という場合です。

 特に下顎の総義歯の骨の状態をX線で診察するとかなり骨が吸収した困難な義歯に遭遇することもあります。
確かに、歯がなくなると人前に出たくなくなり、容貌の変化を他人に見られたくないのは、皆同じだろうと思いますし、老人にとってはとても深刻なことかとも考えます。
やはり、乳幼児から歯の衛生管理をしてきた患者さんは、長い年月をかけても安心して予防に重点をおくだけですみますが、勿論治療処置の巧稚によっても左右されますから、老後になっても安心できるように努めなければならないでしょう。

 入れ歯を装着したときには、始めは違和感があるでしょうが、自分でも鏡の前で声を出したり、下や表情筋を色々と動かして慣れてほしいもです。身体の活動能力を高めることは大切で、歯だけではなく、視力、聴力の衰え、鼻などのチェック等は必要なことでしょう。
特に、歳を重ねると口腔内は乾きやすくなり、ほんのちょっとした傷でも治りが悪く、また、化膿して痛みを伴うことも多くなります。
入れ歯があまりにも外れやすくなった時には調整してもらったほうが良いでしょう。