歯のはなし 2002年1月号
          <身体の一部>

先日、年配の患者さんが来院され『2ケ月ほど前に先生に作ってもらった入れ歯を温泉に行き、失くしたので新しく作ってください』と言われました。

ところが歯科で義歯の取り扱いのル−ルが法律によると「原則として前回の義歯作製から6ケ月経過後」でないと保険による入れ歯の作成が出来ないのです。これは厚生労働省通知として昭和56年に決められてから約20年経過し現在に至ります。
法律用語の「原則として」には注釈が在って「遠くに引越しなどして通院が出来ないとか、急に抜歯などして歯の数が少なくなったなど特別の場合を除く」となっています。

入れ歯の6ケ月ルールなど聞いたこともないでしょうが、法律に従って忠実に治療を行うためには沢山のこうした規則があり、私たち歯科医師としてもその事を
もっと皆さんに周知徹底する努力が必要であると、日頃から感じております。
そして治療費の半分近くを負担している患者さん側の立場に立った、より安心できる便利な制度になってほしいものです。

私の駆け出しの時代には、総義歯の中に患者さんの住所や氏名などを小さく記す工夫もありました。
現在でもご希望によってはラミネート加工によって可能です。だがその前に、他人様の体の一部を作る歯科医師や技工士の誠意、熱意と、それを自分の身体の一部として大切にする患者さんの「心」、患者さんと医師の間の心の通い合いがあれば大方は解決するように思います。
東京で聞いた話しですが電車の網棚にまで義歯の忘れ物があるそうです。
札幌の地下鉄ではその心配はありません。なにしろ網棚がないのですから。
最近はタクシ-に携帯電話の忘れ物が多いと新聞にもありましたが、傘、帽子等自分の身の回りのものは今一度忘れないよう気をつけたいものです。