歯のはなし 2001年11月号

〈国が変われば、治療も変わる〉

 患者さん長南さんは、日本語教師でほとんどが発展途上国で、これまで4カ国で6年間生活をした貴重な体験談を話された。ベトナム、タイ、コロンビア等の中で特にベトナムでの歯に関する興味あることについてご紹介いたします。

(ベトナムで)
 1996年から2年間私は、ベトナムの首都ハノイにある日本ベトナム文化交流協会ベトナム事務所の所長として派遣され、ここで日本とベトナムの交流(NGO)の仕事をした。ここには日本で建設した日本語学校があり、500人のベトナム人が通ってきている。この経営管理もかねていた。この事務所ではベトナムの女性2名事務員と運転手1名を雇っていた。3名とも日本語がかなり出来るほうだった。そのうち何を食べたときだったか、またもや私の歯が欠けジクジク痛みだした。それで事務員の一人(通訳)の一人を連れて歯医者へ行ったが、今すぐ抜くというというので止めた。次に行った歯医者は大きい病院で患者がたくさん待っていたが、私を見ると「ニャトバン?」(日本人か?)と聞いた。事務員は何かいっていたが、すぐ診察台へ上がれといわれ順番を待たずに診察が始まった。待っていた患者は何事もなかったように無言で待っている。誰も文句を言う者もいない。日本ならどうだろう。そのうち通訳の事務員になにやら言っていたが「多少時間がかかり、痛いけど良いか」と言うので、それに従った。歯医者は「注射器は持ってきたか?買ってきたか?」と言うので、瞬間何を言っているのかが理解できなかったが通訳曰く、この国では病院での注射に、病気をうつされたくなければ自分で注射器を買って持ってくるのだと言い、事務員が「私が買ってきます」と言うので頼んだ。そのうちなにやら治療が進み麻酔で感覚がないまま終わった。事務所へ帰ってから仕事をしていたら麻酔が覚めてきたのか、痛み出した。鏡を見てアレレレ口の中にある奥歯がない、これで2本もなくなっていた。1本の歯はただ欠けただけだったのに、根はしっかりしていたので、これに金冠を被せてくれると思ってばかりいたのに。事務員に聞いたら、「歯を2個取りました」と言う。もう後の祭り、日本へ帰るまで食べることに大変不自由したのは言うまでも無い。これなどは、言葉の問題でベトナム語を理解できないために失敗したのである。なぜ注射器を買って持っていくのかの問題は・・・そう言えば大きな通りにはエイズ予防の横幕があちこちにかかっていたのを毎日のように見ていたのでこれでわかり納得した。日本では考えられないことが現実にあるのである。本当に日本では何から何まで国が守ってくれている、外国では自分のことは自分で守るのだと言うことを学んだ。
 現在日本の歯科医院での注射針はデスポ−ザブル(使い捨て)のため、安全です。特に海外へ行く前には、しっかりと口の中をチエックされることをお勧めします。