30年来の友人医師からの手紙~30本の歯と2つの目(パート4)~

歯という字は止+(人X4)=歯でしたが当用漢字では米を噛むという風に変わってきました。また、上の歯と下の歯は二つ足せば母で、「歯は母の様に大切にせよ」と昔から言われましたが、最近再び口の中のケアが健康寿命のために重視され、80歳まで20本の歯をできるだけ残そうと歯科医師会が中心に盛んにPRをしています。私は83歳で8本しか自分の歯が残っていないので、入れ歯が有効に機能せず大いに悩んでいます。しかし、ホストファミリーとして米国の高校生を留学生として世話してみますと、いかに子供の時から歯磨きが奨励されてきたかを良く理解できます。

一方我が国では、子供の時から視力は躾の目標として大きく取り上げられています。我が国の視力検査は0.1刻みですが、0.1と0.2の差と0.8と0.9の差はおなじと誤解されていますが,この刻みは対数比ですので0.1と0.2の差と0.8と0.9の差は大きく、後者の方が数十倍大きいのです。すなわち、視力表は対数比で作られていますので、算数比では比較できません。我が国の徴兵検査では射撃の目標がよく見えるかが重視にされ、良い視力の人から甲種乙種丙種と分けられました。当時軍医監の石原忍(後の東大眼科教授)が富国強兵の流れの中で、この視力検査を実用化し、学校での視力検査にまでに普及し、現在に至っているのです。しかし外国ではこのような視力検査は殆ど行われません。単に0.1,0.4,0.7の単独視力標を判読するだけです。我々の実生活では0.4あれば日常生活は何ら困りませんし、0.7以上あれば運転免許の際にも問題がありません。すなわち日本の視力検査は徴兵検査の名残に過ぎません。

学校で黒板の字が見えない人は前の席では0.4で十分見えます。視力検査で大切なことは遠視、弱視を見つけることです。45年前、ローマ大学眼科に留学した時、視能訓練士学校が眼科に併設されており、遠視や弱視の子供達に両眼視機能訓練をしていました。遠視の子供は近くが見えにくく、本を読むと疲れ易いので、遠視の眼鏡をかける必要があります。欧州では60年からスイス、ドイツで弱視や遠視のための弱視学校が開設されておりました。一方我が国では昭和46年(1971年)に始めて公認され、弱視、遠視の検出が大きく立ち後れました。すなわち西洋では遠視の子供が多く、近視は少ないのです。

眼は2つあるので弱視や視力に差があると立体感や両眼視機能が育たないので、幼少時からの訓練が必要なのです。我々でも年を取って左右差が出て来ると階段の上り下がりが不自由になります。皆さん時々片目を手で隠して左右の視力を比較をする習慣が大切です。常に両眼を使っている私達は片眼視力の低下に気づくのが後れがちになります。

青木 功喜