入れ歯の歴史と必要性(パート1)

私が歯科医師になって数四十数年以上経ちますが、1本も義歯を入れていません。現在、私の歯の総数は30本あり(人間の歯は全体で28本、親知らず4本を含めると32本生えてきます)、左上の8番目の親知らずと左下6番目の第一大臼歯は割れてしまったので、抜歯しましたので、抜歯後、左下第一大臼歯には息子にインプラントを埋入してもらいました。しかし、私も仕事に趣味にと大変忙しく、インプラントの土台を埋入したまま、まだ被せていない状態です…。義歯を使用していない私では、義歯を入れると嘔吐感を感じる患者さんや多数歯欠損した患者さんたちの苦痛を解放してあげる方法は経験でしかわかりません。義歯問題は色々な要素が考えられますが、患者さんに合い、その上で上手に使える設計を描けるかにかかっていることを、この長い歯科医人生で学びました。

入れ歯の歴史を紐解くと、130年前にはゴム床の入れ歯が存在していました。それは、ゴムに硫化物を加熱してかため、接着したために弾力性がなく、見た目も悪かったようでした。昭和2年(1927年)頃には東京・広徳寺の墓から、ツゲの木を彫刻した土台に、ろう石を歯の形に削り、はめ込んだ上下の総入れ歯が発見された記録があります。第二次世界大戦後になってからようやく、見た目もキレイになり、機能性もある程度向上した入れ歯が作られるようになり、合成樹脂の技術が急速に進歩したことなどが、北海道新聞社発行の「歯と口の本」に記載されています。

歯が欠損してしまうと、食片が挟まりやすいです。特に時間が経過してしまった隙間は、歯が近遠心的に傾斜し正中に沿って寄って移動してきます。また、欠損歯の対合歯が伸びてくることで、噛み合わせに不調が生じ、早期接触や咬頭への干渉などの咬合平面が歪みます。歯の位置関係も永久歯が生え揃った当初と異なり、骨の吸収が起こりやすく、上下顎の咬合接触関係に異常が生じ、やがては顎関節症や体に歪みが発生・深刻化していきます。したがって、歯を1本欠損しただけで、審美的・機能的・生物学的に各部位にも機能障害が生じますので、口腔内の欠損箇所をそのままにしてはいけません!欠損歯箇所が次々と広範囲や複数の箇所におよぶと、問題は1本欠損よりも難しくなります。負担過重による残っている歯の状態悪化、歯肉の炎症、口臭、顎堤の吸収など、将来的に考えられる問題が複雑に絡み合ってくることになります。

たった1本の歯をう蝕や歯周病などの原因で失うことで「あぁ!もっと早くに治療していれば良かった。もっともっと歯を大切にすれば良かった…」と気付いた時には時既に遅く、悔し涙を流す患者さんを沢山見て来ました。かかりつけの歯科医とよく相談し、納得した上で治療に取り組んでいただき、痛くなく・良く噛め・美味しく食べられることが大切です!

―続く―